取引先に業務を依頼するときに、自分の要望を伝えたつもりだったのに、全然違う認識をされて、イメージと違うものが出てきた。
そんな経験はありませんか?
やり直しをお願いする手間もかかるし、つい相手を責めたくなってしまいますよね。
でも、こうしたすれ違いは、どちらかが悪いというより、言葉の受け取り方の違いを想定していないときに起こります。
防ぐために身につけたいのが、自分の考えを相手に届くように伝える力と、相手の言葉をありのまま受け取る力。
つまり「国語力」です。
この記事では、仕事の依頼で認識がずれる原因と、社会人として身につけたい国語力を、依頼文の例とチェックリストつきでお伝えします。
依頼が伝わらない・認識がずれるのはなぜ?
同じ言葉でも、人によって思い浮かべるものが違う
自分が当たり前に使っている言葉が、相手にとってはニュアンスの違う言葉として受け取られていることがあります。
たとえば「いい感じに」「シンプルに」「なるべく早く」。
「なるべく早く」は、ある人には「今日中」、別の人には「今週中」かもしれません。
言った本人の頭の中には、はっきりしたイメージがあります。
でも、言葉にした時点で、そのイメージの多くは相手に届いていないのです。
こうした食い違いは「認識の齟齬(そご)」とも呼ばれます。
「このくらいでOK」の幅は人それぞれ
ものづくりの現場には「公差」という言葉があります。
設計どおりの寸法から「ここまでならズレてもOK」と決めておく幅のことです。
仕事の依頼にも、この公差のようなものがあります。
「多少粗くても、まずは早く欲しい」人もいれば、
「時間がかかってもいいから、きっちり仕上げてほしい」人もいます。
お互いの「このくらいでOK」の幅が違うかもしれない。
そう想定していないと、相手は「できた」と思って渡し、こちらは「違う」と感じる。
そんなすれ違いが起こります。
社会人に身につけたい「国語力」とは
国語力は「伝える力」と「受け取る力」
国語力というと、学校の国語のテストを思い浮かべるかもしれません。
でも私は、国語力を次のような力だと考えています。
言葉を用いて、自分の伝えたいことを相手に届くように伝え、相手の伝えたいことをありのまま理解できる力
この力は、2つに分けられます。
- 伝える力(アウトプット):TPOに応じて、その時にその相手に伝わる言葉を選び、組み立てて話す
- 受け取る力(インプット):相手の伝えている言葉の意味を、ありのまま理解して、イメージを共有する
どちらの力も、相手ベースで自分の考えや想いを共有することが前提です。
国語力はコミュニケーションの土台
国語力は、国の審議会でも話し合われてきた言葉です。
2004年に文化審議会がまとめた答申「これからの時代に求められる国語力について」では、
言葉で意思や感情を伝え合うことが、国語のいちばん基本的な役割だとされています。
また、コミュニケーションの基本は、相手の人格や考え方を尊重する態度と、言葉による伝え合いだとも書かれています。
相手ベースで伝え、相手ベースで受け取る。国語力は、まさにそのための力なのです。
伝える力:相手に届く言葉を選ぶ
あいまいな言葉を、具体的な言葉に置きかえる
いちばん取り入れやすいのは、あいまいな言葉を、数字や具体的な言葉に置きかえることです。
架空の依頼文で比べてみます。
書き直す前
ブログ記事を1本、いい感じにお願いします。なるべく早めで。
書き直したあと
新しいメニューを、初めてのお客さんに知ってもらうための記事を1本お願いします。2,000字くらいで、10月31日までに下書きをいただけますか? 雰囲気は、お店のInstagramに近い、やわらかい感じが希望です。
書き直したあとの依頼文には、「何のための記事か」「どのくらいの量か」「いつまでか」「どんな雰囲気か」が入っています。
受け取った人が迷うところが減るので、イメージどおりのものが出てきやすくなります。
相手の前提を知ってから話す
同じ内容でも、相手がどこまで知っているかで、伝わり方は変わるものです。
業界の言葉に慣れている人には一言で伝わることも、初めての人には説明が必要です。
自分の言いたいことをそのまま言葉にする前に、相手を知り、相手が受け入れられる表現や順序を意識して言葉を組み立てる。
これが、伝える力の土台です。
受け取る力:相手の言葉をありのまま理解する
分かったつもりで進めない
すれ違いは、伝える側だけの問題ではありません。受け取る側に原因があることもあります。
正直に言うと、私にも失敗があります。
Web制作の仕事で、相手が何を求めているのかを十分に聞かないまま進めてしまい、(その時は聞けてるつもりでした…)
言われたことだけを反映する作業者になってしまったことがありました。
言葉の表面だけを受け取ると、相手が本当に欲しかったものからずれてしまう。そのときに学んだことです。
「つまり、こういうことですか?」と言いかえて確かめる
相手の言葉をありのまま理解するには、自分の言葉で言いかえて返すのが近道です。
つまり、初めてのお客さんに来てもらうための記事、ということですね。
こう返すと、ずれていれば、その場で相手が気づけます。
今の私が、作業に入る前のヒアリングを大事にしているのは、そのためです。
言葉をそのまま受け取るだけでなく、その奥にある「本当に実現したいこと」まで確かめてから進めるようにしています。
依頼の前に確かめたい、認識のずれを防ぐチェックリスト
誰かに何かを頼む前には、まずは次の5つのことを伝えてみてください。
- 何のための仕事か(目的)
- 誰に向けたものか
- 完成のイメージ(参考になる例があれば添える)
- 「ここまでならOK」の幅
- 期限と、途中で確認するタイミング
受ける側の人も、この5つがそろっているかを確かめてから作業に入ると、やり直しを減らせます。
私が「国語力」を大事にしている理由
私は過去に医療機器の販促資材を作っていました。
開発者のこだわりと、ターゲットへの伝わりやすさ。その両方を叶える方法を、毎日考えていました。
両方を叶えるには、まず開発者の言葉をありのまま受け取ることが欠かせません。
そのうえで、ターゲットに届く言葉に置きかえられないか考えていました。
伝える力と受け取る力は、片方だけでは役に立たない。
そう感じたのが、国語力を大事にするようになったきっかけです。
まとめ|国語力は、社会人の仕事をスムーズにする力
- すれ違いは、言葉の受け取り方や「OKの幅」の違いから起こる
- 国語力は、相手に届くように伝える力と、ありのまま受け取る力
- 依頼の前に、目的・相手・完成イメージ・OKの幅・期限を言葉にする
ビジネスに限らず、コミュニケーションをとる時には、相手を知り、
相手が受け入れられる表現や順序を意識して言葉を組み立てること。
それが、円滑なコミュニケーションと関係性を築く第一歩になります。
Mys Lab.では、記事の執筆や、今ある記事の見直しを、ヒアリングから始めています。
「何をお願いすればいいか、まだ言葉にできていない」という段階でも、お気軽にご相談ください。
→ サービスと料金
読み手に「伝わる」文章の考え方については、こちらのコラムでも書いています。


